私の鍼灸院には、他院から転院される方が多く来られます。中でも、最近はリウマチの患者さんが同じ鍼灸院から連続して来られるケースが増えています。リウマチに対する当院のアプローチについては、こちらの【リウマチ専門ページ】をご覧ください。

なぜ、通っていた鍼灸院をやめて当院を選ばれたのか?
患者さんたちの言葉には、鍼灸業界が抱える大きな課題が見え隠れしています。
「痛いところに鍼をしてくれない」──よく聞く不満
患者さんにお話をうかがうと、こういった声がよく出てきます。
- 「痛いところに鍼をしてくれなかった」
- 「症状とは関係なさそうな場所に、2〜3本だけ鍼を打って終わりだった」
- 「鍼が途中で抜けたが、『気が通った証拠』と言われ、納得できなかった」
こうした対応に不信感を抱き、「ここでは良くならない」と判断して転院される方が多いのです。
実際に当院で治療を受けられた方の声も多数届いています。
【患者様の声はこちら】からご覧いただけます。
もちろん、東洋医学の考え方に基づく治療を好む方もいらっしゃいます。それを否定するものではありません。しかし、すべての患者さんがその世界観に納得しているわけではないという現実を、私たち鍼灸師は忘れてはならないのではないでしょうか。
「伝統芸能」ではなく、「医療」としての鍼灸を目指す
鍼灸業界向けの専門紙『しんきゅう新聞』(ダイヤ工業発行)にて、明治国際医療大学・伊藤剛先生のコラムが掲載されています。
その中で印象に残った言葉があります。
「鍼灸における『もの』である診断システムも、それに付随する治療技術も、多様化しすぎて統一されていない」
「商品としての『もの』が確立しなければ、医療としての『こと』には発展しない」
この「鍼灸の多様化」は、一方で患者さんに混乱を与えています。
患者さんにとって、伝統的な鍼灸も、現代医学に基づく鍼灸も、どちらも単に“鍼灸”という一つのカテゴリにすぎません。効果がある・ないにかかわらず、同じ「鍼灸」として見られてしまうのです。
鍼灸にも明確な“目的と手段”が必要
私自身、若い頃は伝統的な鍼灸や中医学を学び、臨床でも取り入れていました。ただし、症状によっては現代医学的な視点での施術を重視していました。
- 未病や体調維持が目的であれば「伝統・古典系」
- 明確な症状(頭痛、突発性難聴、メニエールなど)がある場合は「現代医学的アプローチ」
特に症状が明らかである場合、原因とされる部位にアプローチすることが必要です。
「頭痛があるのに足に数本鍼をして終わった」といった声をよく耳にします。これは、鍼灸の一つのスタイルではありますが、患者にとっては「意味が分からない」「本当に効いているのか不安」となる場合も多いのです。
鍼灸が“医療”であるために求められること
伊藤先生は次のようにも述べています。
「鍼灸を医療として続けたいのであれば、“伝統芸能”のままではいけない」
私もまったく同感です。鍼灸師の中には「鍼灸は東洋思想・哲学だ」と考える方もいます。それも一つの考えで、否定はしません。
しかし、「治りたい」「痛みを取りたい」と本気で願っている患者さんにとって、思想や哲学ではなく、医学的根拠に基づいた治療を求めるのは当然のことです。
鍼灸が医療であるためには、以下の3点が不可欠です。
- 再現性のある治療法(誰が行っても一定の結果が出る)
- 科学的な検証に基づいた技術
- 患者の立場に立った説明と治療計画
鍼灸がただの「好きな人のための技法」ではなく、多くの人に受け入れられる医療となるには、この「科学化」は避けて通れません。
「東洋の思想」を取り入れつつ、現代の医療に活かす
私が考える理想の鍼灸とは、こういう形です。
- 体の状態は「陰陽五行」など東洋的視点で分析
- 治療手段は、現代医学に裏付けられた技術を使用
これにより、西洋医学にはない「個別性」や「全体のバランス調整」を持ちつつ、患者にも理解される治療が提供できます。
おわりに:患者が安心して選べる鍼灸へ
鍼灸の未来は、業界内の評価ではなく、患者さんからの信頼によって決まると私は考えています。
「効いた」と思ってもらえる治療、「納得できる説明」ができる施術者が、今後ますます求められるでしょう。
そして、「鍼灸は効かない」「あやしい」といった誤解を払拭するためには、一人ひとりの鍼灸師が“医療者としての自覚”を持つことが第一歩です。
今後も、当院では「本当に効く鍼灸」を追求し、患者さんにとって意味のある施術を提供してまいります。
「この症状も鍼灸で対応できるのかな?」と気になる方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
【お問い合わせ・ご予約はこちら】