今回は、腰痛や脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどでよく耳にする「牽引(けんいん)治療」について、実際の現場や医学的な視点から考えてみたいと思います。
特に、整形外科で牽引を受けた経験がある方や、「これって本当に効いてるの?」と疑問を感じている方には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

腰痛でよくある疑問「牽引は効果あるんですか?」
腰痛やヘルニアで整形外科に通っている患者さんから、よくこんな質問を受けます。
「先生、牽引って本当に効くんですか?」
私の知人に50代後半の整形外科医がいますが、
彼が学生の頃(つまり30年以上前)にはすでに牽引治療が行われていたそうです。
つまり、牽引治療は30年以上前から続いている治療法ということになります。
西洋医学は進歩しているのに、牽引治療は進歩していない?
この30年の間に、西洋医学は驚くほど進歩しています。
MRIやCTスキャンの高精度化、最小限の切開で行う手術(低侵襲手術)、再生医療の分野の発展など、
診断から治療までの精度と安全性は格段に向上しました。
しかし、牽引治療に関してはどうでしょうか?
ほとんど進化していないのが実情です。
今でも「腰に20〜30kgの力をかけて引っ張る」というシンプルなメカニズムは昔と同じ。
つまり、技術的にも理論的にも現代医学の進化とはやや取り残されている印象を受けます。
牽引治療の効果は科学的に証明されているのか?
ここが重要なポイントですが、牽引治療の効果は医学的に明確に証明されていません。
一部の研究では「一時的に腰の筋肉の緊張がほぐれる」「気分的にラクになる」といった報告もありますが、
それはあくまで一時的なリラクゼーション効果に過ぎません。
多くの整形外科医の本音としては、
「大きな効果は期待できない」「でも患者さんが希望するから提供している」
という意見も少なくないのが現実です。
骨が動くと思っていませんか?実はそれ、大きな誤解です
意外と多いのが、「牽引で腰の骨が元に戻る」と思っている方。
でも実は、牽引では骨は動きません。

本格的に骨の位置を動かす必要がある場合、整形外科の手術では専用の道具を使って慎重に調整します。
それだけ繊細な作業であり、単に機械で引っ張ったくらいで骨が動くなら、それはむしろ危険です。
「牽引で骨のズレが治る」
というのは、医学的には誤解なのです。
それでも牽引が今も続いている理由とは?
「じゃあ、どうして今でも牽引が行われているの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
その理由の一つが、保険診療の点数があること。
牽引治療は保険で処理できるため、医療機関としても導入しやすいのです。
また、患者さん側も「何かしてもらった感」があるので、満足度もそれなりに高くなりやすい。
これらの理由から、現在も整形外科などで広く利用され続けていますが、
あくまで対症療法の一つであり、根本治療ではないことは覚えておくべきでしょう。
プラセボ効果が期待できる?それでも意味はある?
牽引治療に効果があると感じる方もいます。
それは、「やってもらった」「引っ張られている感じが気持ちいい」などの**心理的効果(プラセボ効果)**が関係している場合もあります。
私は、牽引治療を**「究極のプラセボマシーン」**と表現しています(笑)。
もちろん、筋肉の緊張が一時的に緩和されることで痛みが和らぐ場合もあります。
それが患者さんの生活の質を少しでも上げるなら、全くの無意味ではないとも言えるでしょう。
でも、それを**「本質的な治療」だと勘違いしないことが大切**です。
鍼灸師から見た腰痛の根本原因とアプローチ
鍼灸では、「気・血・水」のバランスや、自律神経の乱れを重視します。
腰痛の原因は、単なる骨や筋肉の問題ではなく、生活習慣やストレス、体全体のバランスの乱れからくることも多いのです。
鍼灸治療では、緊張した筋肉を緩めるだけでなく、
内臓の働きやホルモンバランス、自律神経にもアプローチしていきます。
結果として、慢性的な腰痛や神経症状が改善されるケースも多数あります。
「牽引をしてもよくならなかった」
そんな方にこそ、鍼灸という選択肢を知っていただきたいと感じています。
まとめ:腰痛・狭窄症・ヘルニアの治療法を見直してみよう
牽引治療は昔からある伝統的な方法ですが、
現代医学の進化に比べて、あまり進歩していない治療法でもあります。
一時的なリラクゼーション効果やプラセボ的な安心感はあるかもしれませんが、
それだけに頼っていては根本的な改善にはつながりにくいのが実情です。
もしあなたが、
- 牽引を何度も受けているけど、なかなか改善しない
- ヘルニアや脊柱管狭窄症の症状に悩まされている
- 腰痛を根本から改善したい
と感じているなら、体全体のバランスにアプローチする鍼灸治療や、生活習慣の見直しを検討してみてはいかがでしょうか?
あなたの腰痛改善のヒントになりますように。