「鍼灸師だから薬を否定しているんじゃないの?」
そんなふうに思われることがあります。
でも、僕は薬を否定していません。
むしろ、薬は大切な治療の一部だと思っています。

ただ、「どう使うか」がとても大事。
過剰に頼りすぎるのではなく、必要な場面で正しく使う。
それが僕の考えです。
僕は病院で10年間、西洋医学の現場に携わってきました。
そこで薬の素晴らしさと同時に、限界や副作用についても学びました。
その経験があるからこそ、薬の「必要性」も「注意点」も伝えることができます。
母がガンになったとき、家族として経験したこと
7年前、母が腎臓がんと診断されました。
僕にとって、それはとても大きな出来事でした。
抗がん剤治療が始まり、母は3か月間入院しました。
今の医療制度では、入院できる期間は原則3か月。
その後は自宅での介護が始まります。
実際に家族として介護を体験して、初めてわかりました。
患者本人だけでなく、家族にも大きな負担がかかるということを。
夜中に痛みが出る、寝返りができずに苦しむ。
そのたびに家族も眠れず、体力も精神も削られていきます。
母のつらさに何もできない無力感。
家族として、何か少しでも力になりたい――
そんな想いが常に心の中にありました。
鍼灸師としてできること、できないこと
僕は医師ではありません。
薬を出すことはできませんし、最新医療のすべてを知っているわけでもありません。
でも、東洋医学の視点で身体全体のバランスを整えることは得意です。
鍼灸で痛みを和らげたり、心の不安を軽くしたりするお手伝いはできます。

また、心理カウンセリングの資格も持っています。
がんを宣告されたときの恐怖やショックに寄り添い、
患者さんやご家族の心のケアも行っています。
母もがんを告知された日、
部屋を暗くして一日中泣いていました。
その姿が忘れられません。
「どうして自分が…」
「これからどうなるのか…」
そんな不安に押しつぶされそうになるのです。
数字で見るガンの現状と、これから必要なサポート
日本ではがんで亡くなる方が年々増えています。
たとえば、国立がんセンターの統計によれば、
1981年のがん死亡者数は約16万人。
20年後の2001年には約30万人に倍増。
今では、日本人の3人に1人ががんで亡くなっているとも言われています。
これからもこの数字は増えていくと予測されています。
それだけに、治療だけでなく、心のケアや家族へのサポートもますます大切になると感じています。
ご家族ができること、そして「聞きたいこと」
西洋医学の治療では、薬や検査の数値をもとに治療が進みます。
それ自体はとても大切ですし、必要なことです。
でも、家族として「もっと知りたいこと」「もっと聞きたいこと」もあるのではないでしょうか?
- 自宅での過ごし方
- どんなふうに声をかければいいか
- 食事や生活で気をつけること
- どうやって支えていけばいいか
こういった、**「心の寄り添い方」や「日常でできること」**について
アドバイスしてくれる人がもっと増えたら、ご家族はどれだけ安心できるでしょうか。

鍼灸ができる“緩和ケア”という選択肢
僕ができることは、がんを「治す」ことではありません。
でも、痛みを和らげること、心の不安を少しでも軽くすることはできます。
鍼灸治療による緩和ケアは、体への負担も少なく、
副作用のない優しい治療法です。
また、心理カウンセリングを通じて、
患者さんやご家族が少しでも前向きな気持ちになれるように、心の支えにもなりたいと思っています。