東京大学医学部附属病院では、すでに30年以上前から鍼灸治療が正式に導入されています。
西洋医学の最先端を行く大学病院において、東洋医学の代表格である鍼灸が取り入れられているという事実は、私たち鍼灸師にとっても大変心強いものです。
私自身、2015年に関西医療大学にて、東大病院の粕谷大智先生とともに関節リウマチと鍼灸治療に関する講演を行いました。

粕谷先生は、鍼灸の現代医学的応用において高い見識を持つ臨床家であり、NHK『ためしてガッテン』への出演をきっかけに、一般の方々にも広く知られる存在となっています。
かつては、関東方面にお住まいの患者様で、私の施術を一度でも受けられた方、あるいは私が主催したセミナーに参加された方で、粕谷先生の診察をご希望される方には、私が直接ご紹介を差し上げていました。
しかし、現在は粕谷先生が非常に多忙となり、新規の患者様の受付を一時中止している状況であるため、ご紹介は控えさせていただいております。
鍼灸には「古典派」と「現代医学派」がある
鍼灸には様々な流派がありますが、大きく分けると「古典派」と「現代医学派」に分かれます。
- 古典派鍼灸:経絡や気の流れを重視し、『黄帝内経』などの古典医学に基づいた治療法
- 現代医学派鍼灸:解剖学や生理学、神経学といった科学的根拠に基づいた治療法
私の鍼灸院では、基本的に現代医学に基づく鍼灸治療を中心に行っておりますが、症状や患者さんの体質に応じて、古典的アプローチも併用する“折衷派”の立場を取っています。
たとえば、腰椎の4番・5番に神経根症状があるのに、患部に直接鍼をせず、手足だけで治療を終えるのは、私の臨床的感覚では納得できません。
また、慢性的な痛みが3カ月以上続いているケースでは、「痛みの閾値(いきち)の低下」が起きている可能性が高く、これに対してはパルス通電治療が有効であることが複数の論文で示されています。
さらに、慢性痛の背景には脳内セロトニンの低下が関係することもあり、三叉神経領域への刺鍼によって脳内血流量を高めることができ、痛みの緩和に寄与するという科学的根拠も存在します。
こうした知見を踏まえると、例えば線維筋痛症のような全身の慢性疼痛疾患には、古典的鍼灸だけでは限界があるとも言えます。
正しい診断と神経・脳科学の理解がなければ、鍼灸の可能性を十分に引き出すことはできないのです。
鍼灸は「医学」であるべき
最近、ある講義の中で「文学で治療をするのか、科学で治療をするのか」という問いかけがありました。
東洋医学は、確かに東洋思想や哲学に深く根差しています。『素問』『霊枢』といった古典は、私たち鍼灸師にとって大切な基礎です。
しかし、いくら古典を深く読み込んでも、それだけでは現代の病気は治せません。
現代に生きる患者さんの身体を理解するには、科学的な知識が不可欠です。
たとえば、寺田寅彦が語った「科学と文学の融合」や、湯川秀樹や朝永振一郎のように、科学者でありながら文学的感性や哲学を大切にした人々の視点は、今の鍼灸師にも必要ではないでしょうか。
科学の目で体を見つめながら、哲学の目で人間全体を診ていく。
この両方の視点を持つことで、医師とは異なる角度から患者の体と心を捉え、真の意味での治療ができるのが鍼灸師の強みだと私は考えます。
まとめ:科学と哲学の融合で、鍼灸の未来を切り拓く
- 東京大学医学部附属病院でも鍼灸が30年以上導入されている
- 鍼灸には古典的アプローチと現代医学的アプローチがあり、適切な使い分けが重要
- 痛みや慢性疾患に対する治療には、科学的根拠に基づいたアプローチが必要
- 東洋哲学の視点と現代医学の知識、両方を融合させることで、より効果的で深い治療が実現できる
鍼灸は単なる伝統療法ではなく、医学としての発展と社会的信頼を得るべき分野です。
そのためにも、今後も臨床と研究の両面から、真摯に取り組んでいきたいと考えています。
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