他の鍼灸院から移って来られる方が多いです

僕の鍼灸院には他の鍼灸院から移って来られる方が多い。

最近はリウマチの患者さんたちが、同じ鍼灸院から来られるケースが目立ちます。

通院をやめようと思った理由をたずねると、「痛い部分に鍼をしてくれない」「ぜんぜん関係ない部分に2,3本鍼をして終わり」というものが多い。

転院された方の中には、手を動かしたら鍼が抜けたため、

先生に伝えると「停滞していた気が通った、体が鍼をはじいたから問題ない」と言われ、「これはアカン」と思い、行くのをやめたと話されていました。

このような「いかにも東洋医学」な世界観が好きな人には理解ができますが、一般の人には受け入れられないのではないでしょうか。

ダイヤ工業さんの業界向けのしんきゅう新聞で、明治国際医療大学の伊藤先生のコラムが連載されています。最近、読んで深く感銘を受けました。私も納得、これからの鍼灸は「伝統芸能」のようではいけません。

伊藤先生のコラム記事から引用です。


引用スタート

「もの」にならないと世間に認知され、広がることはありません。そのため、大前提として「もの」がきちんと確立しなければ、その先の「こと」はないということです。

鍼灸でいう「もの」は技術であり、その技術の裏打ちとなる診断システムも「もの」に含まれると考えます。しかし、鍼灸における「もの」である診断システムも、それに付随する治療技術も、多様化しすぎて統一されていません。

(ダイヤ工業 しんきゅう新聞2020/09/17 引用)

この記事にも書かれていますが、患者さんにとっては、どのようなスタイルの鍼灸を受けようとも「鍼灸」という同じカテゴリーになってしまいます。効果がある治療もない治療もすべて同じ鍼灸として見られてしまいます。

ぼくの鍼灸院に転院してこられた方も実際、「鍼灸のやり方はどこも一緒」と考えいましたと、話されています。見方を変えれば、「効果のある治療も、ない治療もすべて同じ鍼灸」ということになります。

鍼灸には、様々なやり方があります。 大きく分けて「伝統・古典系」と「現代医学・科学系」の2つです。20代の頃、伝統鍼灸や中医学の勉強会に参加していました。実際、臨床でも使っていました。しかし患者の症状によって使い分けをしていました。

未病、健康維持の鍼灸であれば、「伝統・古典」でもいいのですが、頭痛、突発性難聴、メニエールのように、症状がでているものには、医学的に関係する部分に鍼をする必要があると考えています。

伝統系のやり方の鍼灸院に通院されていた方からよく聞く話は、「全然関係ないところに鍼をされた」「頭痛があるのに、足に鍼を2,3本して終わった」「こういうのが鍼灸なんだと思っていました」

このような鍼灸のやり方が、すべてと思われると少し問題があります。関係ない部分に鍼をするのは、普通の人には理解しがたい世界ですから。

このような世界観が好きな人もいますので、これはこれでいいのですが、「医療」となると、これでは問題があるんではないかと思います。

引用スタート

痛いところに鍼をするのであればわかりやすい一方で、痛くないところに鍼をする際は、理解できない人にとっては意味が分からないため、道具としての役割さえ理解してもらえません。なぜなら効果が感じられないからです。

「伝統芸能のような鍼灸」であれば、こういうスタイルでもよいけど、「医療としての鍼灸」でいくのであれば、治療スタイルを考えなければいけないのではないでしょうか。

鍼灸を「もの」にしないという選択も我々には可能です。つまり、商品としての価値を高めようとしないという道です。国民の多くが利用する医療としての鍼灸は消失することとなり、好きな人だけが利用する「伝統芸能」になっていくと思われます。

鍼灸が「もの」として、世間にどんなイメージを持ってもらうかというブランディングを行わなければ、世間一般に知られる医療にはならず、一部のファンが好む伝統芸能になってしまうわけです、これが「もの」しかできないことなのだと思います。

(ダイヤ工業 しんきゅう新聞2020/09/17 引用)

鍼灸は「医療」ではなく、「東洋哲学」「東洋思想」なんだと、鍼灸師が考えるのであればいいと思います、自由ですから。

しかし、本当によくなりない、治りたい、という人にとって、「哲学・思想」で鍼灸をされることは、望まれていないのではないでしょうか。

こういう話をすると、業界の人で怒る先生もあいると思います。私も昔、同業者ともめたことがあります。東洋医学的な考えで、病になった背景を考えるのはいいと思います。

実際、私も東洋医学の話を患者にすることがあります。しかし、治療のやり方まで東洋思想で行うことには、反対です。

鍼灸の科学化、現代医学的に鍼灸を解明していうという話は、今から50年以上前から出ていましたし、議論もされていますが、相変わらず、議論は続いているように感じます。

「医療」に求められているのは、医学的、科学的な根拠、再現性です。誰がやっても同じ結果になることです。東洋の神秘でも思想でもありません。それが、鍼灸の発展でもあり、患者のためでもあると思います。

東洋思想、陰陽五行思想で人体を考え、手段は、エビデンスに基づいた鍼灸で対応するというのが、西洋医学にマネできない、一つ上のステージに上がった現代鍼灸なのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

学生時代から京都、大阪の鍼灸整骨院にて4年間修行。
医療法人孝至会みのりクリニック内の東洋医学・リハビリ科にて10年間勤務。医師と協力して延べ3万人に鍼灸施術を行う。
主任を経て大阪府江坂駅前にて鍼灸治療院を開院。

【資格】
・国家資格 (はり師・きゅう師)
・「機能再生士」認定
・日本メンタルヘルス協会
認定基礎心理カウンセラー取得
・日本メンタルヘルス協会
公認心理カウンセラー資格取得

【所属団体】
・一般社団法人 全国鍼灸マッサージ協会 会員

【講演活動】

2015年 関西医療大学にて『「関節リウマチに対する鍼灸治療~メカニズムとエビデンス』講演 
(東京大学医学付属病院リハビリテーション部鍼灸部門主任の粕谷先生と合同)
2015年 明治東洋医学院にて『薬を否定せずに行うリウマチ鍼灸』講演
2017年 平成医療学園にて現場力ステップセミナー主催 『関節リウマチ臨床鍼灸』講演
2017年 (一社)日本生殖鍼灸標準化機関(JISRAM)にて『リウマチについて』講義2021年大阪医療技術学園 痛みの鍼灸 授業・実技を担当

2014年~ 一般向け講座『痛み・リウマチ克服セミナー』主催

【掲載】
2015年 医道の日本誌 専門鍼灸記事 掲載
2015年 明治東洋医学院 入学パンフレット 活躍するOB 取材
2016年 医道の日本誌4月号『関節リウマチ鍼灸』論文掲載