鍼灸師が命を救うこともある|人工透析寸前だった患者さんの実例と“レッドフラッグ”の重要性
先日、医療職向けの『症例カンファレンスセミナー』に参加してきました。
このセミナーでは、「病院での検査や治療が必要な症状を、鍼灸院でどう見抜くか」というテーマが取り上げられていました。
これは私たち鍼灸師にとって非常に重要なテーマです。
なぜなら、見落としが命に関わることもあるからです。
東洋医学だけでは見抜けないリスク
「鍼灸師=東洋医学の専門家」と思われがちですが、実は鍼灸学校では西洋医学の授業もしっかり行われ、国家試験にも出題されます。
私が学んだ学校でも、試験直前まで症例検討や実技に力を入れていました。
当時は「もっと国試対策してくれよ…」と思っていましたが、現場で役立つのは圧倒的に実技と症例検討の授業でした。
学生時代から、特に「レッドフラッグ」(=鍼灸適応外の緊急症例)の見極めは何度も教わり、卒業後も関連書籍で学び続けてきました。

実例:人工透析寸前だったパーキンソン病の患者さん
数年前、私の鍼灸院にパーキンソン病で通っていた50代男性の方がいました。
通院歴は4年、奥様の車で片道1時間かけて来られていました。
ある日、「2日前から尿が出ない」「勝手に漏れてしまう」との相談を受けました。
病院は受診していないとのこと。
これは…まずい。
触診すると、明らかに下腹部が異常に張っていました。
患者さんも奥様も「薬の副作用かも?」「年齢的に前立腺のせいでは?」と軽く考えておられたようですが、私はピンと来るものがありました。
鍼灸ではなく、すぐに病院へ行くべき状態だった
私の院では、患者さんにお薬手帳や血液検査データを持参してもらうことが多く、
この方が糖尿病もあること、食事制限ができていないことを把握していました。
これは明らかに泌尿器・腎臓の異常の可能性が高い。
ただし、鍼灸師は診断行為はできないため、「すぐ病院に行ってください」と繰り返し伝えました。
しかし、土曜でしか来院できないとの理由から「せっかくだから鍼だけでも」と言われました。
そこで私は提案しました。
「半分の時間だけ鍼をする。その代わり、すぐ近くの泌尿器科に行ってください。」
自宅に戻ってからでは、午前診に間に合わず受診できない可能性があるからです。
そして…命を救う結果に
後日、本人から電話がありました。
「先生は命の恩人です。」
泌尿器科で尿検査を受けた結果、医師から「あと1時間遅ければ人工透析だった」と告げられたそうです。
そのまま救急搬送され、入院。病院から電話をかけてこられたとのことでした。
病院勤務時代に糖尿病合併症の怖さを知っていた経験が、
今回の「気づき」につながったと思います。
東洋医学×西洋医学の“どちらも知っておく”重要性
もし東洋医学の腹診や脈診だけで判断していたら、ここまでの危険性に気づかなかったかもしれません。
鍼灸師に求められるのは、「東洋医学の技術」だけでなく、西洋医学の基礎知識と判断力です。
病気の本質やレッドフラッグを見抜く力が、患者さんの命を救うこともあります。

今後もレッドフラッグ症例を連載予定です
こうした実例をもっと多くの方に知っていただきたく、今後もレッドフラッグに関する実体験や症例を何回かに分けて紹介していこうと思います。
- 単なる肩こりに見えて脳梗塞だった症例
- 胃の不調に見えて実は消化器がんだった方
- 「冷え性」で来院された女性が実は重度の貧血だった例
など、さまざまな背景を持つ患者さんが鍼灸院には来院されます。
まとめ:鍼灸院でも命に関わる判断が必要になる時代
- 鍼灸院でも西洋医学の知識は不可欠
- レッドフラッグを見逃せば、患者の命に関わる
- 鍼灸師も医療連携の意識を持つことが大切
- 患者さんの命を守るために「見抜く力」を育て続ける
「鍼灸師は診断できない」
これは法律上の事実ですが、
「診断に至る前の“危険サイン”を見抜く力」は必ず求められます。
医療の一端を担う者として、これからも学び続けていこうと思います。
JR新大阪駅から大阪メトロで2駅
痛みの疾患・リウマチ・ 抗癌剤の副作用、突発性難聴、不妊が得意な鍼灸院
氣よし鍼灸院
大阪府吹田市豊津町1-14サンマンション江坂407
電話 06-6170-9671
■ ホームページ
痛みとリウマチ専門サイト
http://www.kiyoshi-hari9.com/