整骨院の保険利用、リラクゼーション目的はOK?現場で感じた“モヤモヤ”の正体
健康保険制度は、すべての国民ができるだけ経済的負担を少なくし、健康的な生活を維持するために設けられた素晴らしい仕組みです。特に、リウマチなど高額な薬を必要とする慢性疾患の方にとっては大きな支えとなります。
たとえば、リウマチの治療に用いられる生物学的製剤では、保険を使っても月に4〜5万円の自己負担になることも珍しくありません。実際、コロナに効果があるとされ話題になった「アクテムラ」なども、高額であるがゆえに使用をためらう場面もあるほどです。
このように、本当に困っている人にとって保険は必要不可欠な制度です。しかし一方で、「なんでも保険が使えればいい」と考える人たちの存在もまた、制度の歪みを生んでいるのが現実です。

保険マッサージを求めて整骨院を渡り歩く“ジプシー”たち
私が鍼灸学校に通っていた頃、整骨院で見習いとして働いていました。
当時、患者さんの多くは「肩がこるから揉んでほしい」「長くマッサージしてくれる整骨院がいい」とリラクゼーション目的で通院していました。15分、20分、30分と“揉んでくれる時間の長さ”で整骨院を選ぶ人も珍しくありません。
こういった方々のことを、当時は冗談めかして「ジプシー」と呼んでいました。安く、長く、たくさんマッサージしてくれる場所を求めて整骨院を転々とする姿が、まるで旅をするかのようだったからです。
他力本願の健康法に、未来はあるのか?
リラクゼーション目的で整骨院に来る人の多くは、運動や体操によって自分の体を良くしようという意識がほとんどありません。「自分で治す」ではなく「誰かに治してもらう」。つまり、完全に“他力”に頼っているのです。
デスクワークによる肩こりも、変形性膝関節症による痛みも、スポーツによる負担も、すべてをマッサージで解決しようとする——。その発想が、健康保険制度をゆがめる原因になっているのではないかと感じています。
「もっと強く」「もっと長く」…それって本当に体に良いの?
「もっと強く揉んで」「30分はやってほしい」
こうした声も多く聞かれますが、強すぎるマッサージは体に害を与えることもあります。
過剰な刺激で毛細血管や神経線維がダメージを受けたり、筋肉が硬くなることすらあるのです。強いマッサージを繰り返していれば、皮膚や筋肉に“タコ”を作ってしまっているのと同じ状態になることも。
本当に健康を目指すなら、必要な運動や生活習慣の見直しといった「自力」と「他力」のバランスが重要なのではないでしょうか?

整骨院は“マッサージ屋”ではありません
ここで基本に立ち返っておきましょう。
整骨院で保険が適用されるのは、**打撲・捻挫・脱臼といった“外傷”**に限られます。
「肩こり」「疲れ」「歩きすぎた後の膝の痛み」は、本来は保険適用外です。
このような目的で健康保険を使ってマッサージを受けている場合、知らず知らずのうちに制度の不正利用に加担している可能性があります。
また、マッサージをするには**「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要**であり、保険で受けるには医師の同意書も必須です。
「整骨院で保険で鍼をしてくれるよ」は本当?
時々、「整骨院なら保険証を持っていけば鍼をやってくれるよ」と聞くことがあります。
ですが、これも医師の同意書がなければ不正行為です。
鍼灸治療に健康保険を使う場合も、マッサージと同様に医師の同意書が必要であり、適応部位も一部位(肩だけ、腰だけ等)に限られます。
「全身鍼灸が保険で受けられる」なんて話は、制度上あり得ません。
制度の未来を守るために、私たちが考えるべきこと
国民皆保険制度のおかげで、私たちは比較的安い自己負担で良質な医療を受けることができます。
しかし、それは税金と保険料によって支えられているのです。
リラクゼーション目的のマッサージにまで保険を使えば、いずれは制度の財源が枯渇してしまいます。実際、私は以前、高齢者に対して訪問鍼灸を保険で行っていましたが、8年前に中止しました。
院内の鍼治療も、健康保険内での対応では限界を感じ、現在は行っていません。
本当に健康を得るために大切なのは「自分で努力すること」
気持ちいいだけのマッサージに頼るのではなく、本気で身体を変えていくための自助努力が必要です。
受け身ではなく、日々の姿勢や動き、食事、習慣を見直すこと。
これこそが、真の健康につながる道です。
整骨院や鍼灸院を“安く気持ちよくなれる場所”としてではなく、本来の医療的な役割を理解したうえで利用していただきたいと、心から願っています。
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